第二章 十月に雨が降る 二

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 橋を渡り切って振り返ると、水位が更に上がっていた。今の状態だったら、きっと渡っていなかっただろう。しかし、その事を継げずに、俺は道原の腕を叩いた。 「もう大丈夫、通常社会に着いた」 「良かった……」  俺はそのまま道原の膝に座ると、一緒に運転する事にした。 「そこを右折」 「はい」  少し高台の道に移動すると、通り抜けてゆく雨水が川のようになっていた。そして、すれ違う車は一台もない。この道は水没しないが、横からやってくる泥水のせいで、境界線が全く見えない。 「そこの公園の駐車場で少し休憩」 「休憩ですか???」  急いで通過したい所だが、少し雨の様子を確認したい。  そして高台の公園から街を見下ろすと、雨のせいで、あちこちで水没車があるのか、パトカーが巡回していた。 「夏目さん、パトカーに会いたくないのですか……」 「それは、そうだ」  現在は、警察に追われていないが、あまり会いたくない。どこで、気付かれるのか分からないからだ。 「今日中には到着しないな……」 「そうですね……」
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