第二章 十月に雨が降る 二

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 バナナやミカンではなく、酒が欲しい。だが、果物ばかり与えてくる。 「雨は小降りになったけれど、まだ、復旧に時間がかかる道はあるな……」  ここから先には、長い登りがあり、面している斜面の土砂が流れ込んでいる箇所があるらしい。だから、ここで情報を収集していたのだろう。  だが、裏を返せば。このトラック達が出発したのならば、走れる見込みがあるという事だ。  俺がドライバーと握手していると、慌てて道原が戻ってきた。 「すいません、ウチのペットが何かしましたか?」 「いやいや、握手されたり、ハグしたり。癒されたよ。ありがとう」  こちらも、良い情報を得られた。俺が道原によじのぼり、ドライバー達に、バイバイと手を振ると、今度はレジ袋毎、差し入れを持たされてしまった。 「夏目さん、急に重くなりましたね」 「……主に、腕から先が重い」  沢山持たされてしまった。  そして、車に戻ると、簡単な食事をする事にした。 「俺の端末」 「人目があるので、派手に端末を使わないでください」  確かに、猿のいる車として注目されてしまった気がする。
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