第二章 十月に雨が降る 二

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 しかし、辰見が帰って来ないというだけで、他に情報が何もないのも事実だ。 「情報が少ない」 「まず、状況を把握しましょう」  それでは、三毛は夢で辰見に会っているので、聞き込みから始めよう。 「三毛、辰見は親父さんを探しに行ったのか?」 「…………いいえ。探しに行くのではなく、父親の所に行って来ると言っていました」  辰見は父親の居場所を知っていた。そして、帰って来ないので心配していたらしい。  だが、それきり辰見とは連絡が取れなくなったという。 「辰見の親父は、探偵だな?」 「そうです。時雨探偵事務所です」  何故辰見探偵事務所ではなく、時雨探偵事務所なのかといえば、共同経営者がいるかららしい。 「辰見の母親は地下社会の住人で、凜子(りんご)さんです。そして、辰見には二人の妹もいて、美柑(みかん)と檸文(れもん)です。三人は凄く美人で、地下社会で飲食店をしています」 「つまりは、探偵事務所は地下社会に強いという事か……」  この三人が経営している店が、『時には雨』という名前らしい。だから、辰見の父親は探偵事務所を時雨にした。
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