第二章 十月に雨が降る 二

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 だが母親は、地下社会の住人なので、裏社会では生活できないという。 「凜子さんは、地下社会の住人なので、籍を持っていなくて……それで……」 「辰見の兄妹は、籍を持っているので裏社会に住めるけれど、母親は無理だったのか……」  凜子は店を持つまでは制裁屋をしていたので、そういう面でも、裏社会には住めなかったらしい。 「時雨探偵事務所か……」 「地下社会に入り込んだかもしれないという時、探せる窓口になりたい。そういう意味で作った事務所だと言っていました」  地続きになっていても、繋がっていない社会は存在する。裏社会は通常社会の延長線で、法律も国籍も同じ物を使用するが、地下社会は隣接していても、全く別の世界なのだ。  裏社会の住人であっても、自由に地下社会を行き来する事は出来ない。そもそも、地下社会がそれを許さない。辰見の兄妹は、ハーフなので許されているだけだ。  そういう意味では、時雨探偵事務所という場所は、大きな意味を持つ。 「流石、菊花」 「褒める所は、そこですか?」
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