第二章 十月に雨が降る 二

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 そして、辰見の父親、玲央名は裏社会の住人だが、母親は通常社会の人間だったらしい。だから、通常社会からの依頼を引き受ける事も多かった。 「玲央名さん自身も、ある意味ハーフだったのか……」 「人種的なハーフではありませんけど、そうです」  異なる社会に籍を置いて育った。だから、玲央名は架け橋になる事務所を作った。そういう気持ちは、俺にも分かる。  そして、今俺達が向かっている先も通常社会で、かなり田舎だった。そんな場所に、どうして玲央名が行ったのか。それが、まず疑問になる。 「俺も調べるか……」  俺は元捜査官だが、今はスタッフがいない。だから、調べる事がこんなに大変だったのかと実感する日々だ。しかし、まだ俺には地下社会の人工知能が協力してくれているので、マシな方なのかもしれない。 「辰見 玲央名か…………」  調べてみると、玲央名よりも、凜子と美柑、檸文の方が有名で、『時には雨』は隠れた名店だった。その豆腐は、一度食べたら、他の豆腐では満足出来なくなる程の美味しさらしい。俺も、今度、豆腐を食べに行こう。
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