第二章 十月に雨が降る 二

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今から二十年近く前、玲央名は通常社会から人探しの依頼を受けた。  だが、通常社会にも多くの探偵がいて、調査会社も存在している。地下社会や裏社会絡みの人探しならば分かるが、ただの人探しだったので、どうして玲央名の事務所を選んだのか分からなかった。  そこで玲央名は、依頼を受ける前に、依頼者の情報を確認した。 「依頼者は、廣川 亜子(ひろかわ あこ)。当時はまだ大学生でした」 「大学生が、どうして、裏社会の探偵事務所を知っていた????」  そこは、玲央名も同じ事を思ったらしい。  だが、その原因はすぐに分かった。 「亜子は、既に幾つもの探偵に頼み、結果、見つけられずにいました。そして、見つけられなかった探偵が言った言葉が、もしかしたら裏社会が関わっているのかもしれないというものでした」  亜子は幾つかの探偵から紹介を受けて、裏社会の探偵に依頼した。しかし、依頼を受けてくれる事務所は、どこにも無かった。 「亜子は連絡の取れなくなってしまった、婚約者を探していた。だが、いなくなる理由が無かった。そして、亜子の叔父は警察の官僚で、裏社会の人間は関わる事を避けた」  そして玲央名の事務所に来た時は、既に他に探偵は無いという状態だった。
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