第二章 十月に雨が降る 二

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「玲央名さんも依頼を断ろうとした。しかし、その時、凜子さんは大怪我をしていて、治療費が必要だった。駆け出しの探偵に、大金を得る方法などない。だから迷った」  そこで、どうして玲央名が探偵になったのかといえば、それも凜子の為だった。  地下社会では、籍を入れるという概念が無いが、パートナーとは共有財産を持つという暗黙のルールのようなものが存在した。不動産や貴金属の場合もあるが、玲央名は凜子に制裁屋を引退して貰いたかったので、店を用意しようとしていた。だから秘書を辞め、探偵事務所を開いた。   それが人探しの依頼を受ける店。地下社会も通常社会での人探しは困難なので、玲央名は凜子と共有名義にして、共に頑張ろうとしたのだ。  そして亜子がやって来た。  その件は、玲央名が業務日誌に詳しく書いてあったという。 『その日は雨で、事務所を開いたものの誰もやって来なかった。そして、電話も無く、ただ雨音だけを聞いていた。今日はこれで営業を止めよう、そう思った時、ドアを叩くノック音が響いたので、寝転んでいた椅子から、転がるように飛び起きてドアを開けた』 「これ業務日誌なのか????」
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