第三章 十月に雨が降る 三

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 この埋まっているという言葉は、当時、あちこちに穴があったせいだという。その穴は木の伐採による土砂崩れで出来たもので、上部に木々が残っているが下の土砂が崩れて無くなっているようなものだった。そして、常に場所を変えていた。  だが、次に家庭教師が消え、更に造園に関わっていた庭師が消えた。その家庭教師と女性は、駆け落ちしたとの噂も流れた。 「造園は建物の屋上、ホテルの庭など狭い場所で自然を再現するもので、今は定番になっています。季節ごとに庭木を入れ替え、常に新鮮な庭を提供します。そのヒットが、その失踪の後でした」  そして、失踪が続いていく。 「失踪した女性は、亜子さんの叔母。父親の妹でした。そして、依頼者の母でした」 「婚約者の母親なのか……」  そして、従兄弟が手伝いを始め、ほぼ同居の状態だった。 「この廣川造園の評判はどうだろう」 「かなり良いです」  亜子の父親の経営する廣川造園は、庭を見に来る人の為に、離れを制作し、御茶屋を建てた。そして、古民家などを移設させ、畑などを整え、昔の田舎を満喫させる食事も用意した。
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