第三章 十月に雨が降る 三

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「亜子は、成功の前に人が消えるので、土地の生贄になっているのだと言ったのか?」  実際、似たような回答だったらしい。  そこで、玲央名は何が起こったのか、解明したいと思った。 「しかし、亜子が怖がっていたのは、一人になってしまう事で……事件ではなかった」 「亜子さんが産まれた時に、母親、祖母、祖父と次々と亡くなっていました。だから、亜子さんには家族と呼べる人間は父親しかいなくなっていた」  そして、見た目は気丈だが、どこかで亜子は狂っていた。 「……亜子さんは、玲央名さんを引き留めておこうとして、勝手に婚姻届けを出しました」  玲央名には相手がいたが、地下社会の住人なので、戸籍上は独身だった。 「そして、亜子さんは長男を出産します」  それは、玲央名の子供だった。 「玲緒奈さん、ダメだよな…………」 「そこは、男なので、理解しましょう」  理解しても良いが、俺は浮気をしなかったタイプだ。それ程までに、妻が強かった。 「玲央名さんは、誰も見つけられないまま裏社会に戻ります」 「玲緒奈さん、仕事もダメか……」
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