第三章 十月に雨が降る 三

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 そして、新しい部屋が出来ると、再びファンが訪れる。 「娘の趣味を一番に応援していたのが、良美だった。そして、一番の理解者だった」 「どうして分かるのですか?」  それは、良美の作った部屋にある。  その部屋は、今も残されていて、娘が管理していた。 「良美が倉庫に作った部屋は、娘が大好きだった、ぬいぐるみが夜になるとヒーローになるアニメを、忠実に再現したものだった」  忠実でかつ、完璧だった。  そしてそれは、良美の娘にとっては、言葉以上の意味があった。 「その世界に入る幸せ」 「娘も、沢山の部屋を作っています……」  そして、原点になっているのだ。 「部屋を貸切る場合は、三時間で十万円。一日一組のみ。この部屋の貸し出しで食べてゆけるほどだ」 「予約は一年分のみ、一週間単位で予約開始になり、一分以内で完売」  そして、良美には失踪する理由が無かった。 「話が脱線した。ここの景色を総合すると、当時、良美がいた職場だろう」  俺が立っている場所は道路で、後ろは森になっていた。そして、道は長い坂道で、側溝には雨水が流れている。
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