51人が本棚に入れています
本棚に追加
季節は夏の終わりか秋といったあたりで、森はまだ紅葉していない。しかし、暑さはない。
周囲は暗いが夜ではなく、近くに民家は無かった。
「庭木を育てている。こっちは、弱った庭木を引き上げ、再生している」
坂道を下り始めると、道原は森を探さなくて良いのかと、何度も振り返っていた。
「この森には、管理用の道は幾本もあるが、外へと続く道はこれしかない」
それは、この道だけ舗装されていて、かつ二車線という幅を持っていたからだ。
植木には巨大なものもあるので、大型の車を使用しなくてはならない場合もあるのだろう。だから、この道は外へと繋がっている筈だ。
「ここに、来客用の駐車場」
「黒い軽ワゴンがあります」
雨なので、来客は断っていた筈だ。
雨が降ってしまうと、舗装されていない道はぬかるんでしまい、長靴を履いていても歩き難い。それに、傘が邪魔をして、庭木も良く見えない。
そして、車のナンバーを確認してみると、地元のものだった。
「車の中に女性がいます」
「そっと乗り込むぞ」
最初のコメントを投稿しよう!