第三章 十月に雨が降る 三

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 季節は夏の終わりか秋といったあたりで、森はまだ紅葉していない。しかし、暑さはない。  周囲は暗いが夜ではなく、近くに民家は無かった。 「庭木を育てている。こっちは、弱った庭木を引き上げ、再生している」  坂道を下り始めると、道原は森を探さなくて良いのかと、何度も振り返っていた。 「この森には、管理用の道は幾本もあるが、外へと続く道はこれしかない」  それは、この道だけ舗装されていて、かつ二車線という幅を持っていたからだ。  植木には巨大なものもあるので、大型の車を使用しなくてはならない場合もあるのだろう。だから、この道は外へと繋がっている筈だ。 「ここに、来客用の駐車場」 「黒い軽ワゴンがあります」  雨なので、来客は断っていた筈だ。  雨が降ってしまうと、舗装されていない道はぬかるんでしまい、長靴を履いていても歩き難い。それに、傘が邪魔をして、庭木も良く見えない。  そして、車のナンバーを確認してみると、地元のものだった。 「車の中に女性がいます」 「そっと乗り込むぞ」
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