第三章 十月に雨が降る 三

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 この二人は、幼馴染であったが、仲が良いというものではなかった。  真面目な良美に対し、弥生は都会に出て、専門学校に通い、彼氏も幾人も作っていた。周囲での人気も、派手な弥生の方が上だったが、良美の実家を考慮して、いつも一番に名前を呼ばれるのは良美だった。 「……いいよな、良美ちゃんは……実家が金持ちで……」 「そんなことないよ」  弥生の声は、次第に暗くなっていったのに、良美は全く気付かずに、読んだような回答をしていた。それに、良美は雨が気になるようで、橋が近くなってくると、水位を気にしていた。 「雨が強いな……川、大丈夫かな……前の大雨の時は、水位が越してしまって、かなり植木をダメにしてしまって……」  良美は植木を子供のように育てていたので、枯れてしまう事が悲しかった。  しかし、弥生は瞬間、険しい顔をした。 「……………………いつも、いつも……良美ちゃんは優等生で……私は比べられたな……」 「私も、弥生ちゃんに比べられていたよ」  だが、いつも良美の眼中には、弥生がいなかった。つまりは、比べられて嫌な思いをしていたのは、弥生だけだった。
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