第三章 十月に雨が降る 三

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「誠士さんもね……お金目当てで、良美ちゃんと結婚した……」 「ああ、夫は弥生ちゃんとも付き合っていたね……私は自分の会社があってね、婿が欲しかったの……そうしたら、夫が自分はどうかと言ってきたのよ」  別に、弥生から誠士を奪ったのではなく、誠士の方から婿養子を志願してきたのだと、良美は上の空で説明した。 「……自分の会社?」 「そう。兄の仕事を手伝っているけど、自分の会社も持っているの……それは、娘が大きくなったら……一緒に会社をやって……最終的にはあげるつもり」  その会社は、現在、娘が引き継いでいるらしい。もしかすると、それがコスプレの店なのかもしれない。 「誠士さんの名前でいいじゃない……」 「嫌よ……私の会社だもの」  その言葉に、弥生の目が昏く沈んだ。  そして、良美は弥生の地雷を踏んだ事に、全く気付いていなかった。
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