第四章 十月に雨が降る 四

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 俺達は、この過去を変える事は出来ない。だから、良美の救助よりも、弥生の行動を確認してしまった。しかし、人道的には、良美を優先すべきだっただろう。  夜になると雨は止んだが、川では誰も良美を探していなかった。 「……殺されていたのか」 「知ると、分からなかった事が不思議になります」  この時、良美は職場付近の森でいなくなったとされていたので、誠士以外の誰もが川には来なかった。  そして、真実とはいつもそんなものなのだ。  だが、この真実に気付いた人物がいた。それは、玲央名の業務日誌によると、家庭教師をしていた竹本だ。 「あ、目が覚めた」  しかし、ここで三毛が目覚めたようで、俺達は現実に戻った。 「まだ早朝ですが、車を走らせましょう」 「そうだな、雨も止んでいるし。快晴になりそうだ」  太陽はまだ山の向こうにあるが、稜線がくっきりと浮かび始めた。そして、山が近くに見えるくらいには、田舎に来た。  そして、俺は助手席に座っている三毛の膝に移動した。
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