第四章 十月に雨が降る 四

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「家庭教師も殺されているのでしょうか?」  女性というのは怖い生き物で、人を殺していても、数分後には普通の生活をしてしまう事がある。そして弥生は、亜子を殺していても、その捜索に加わり、心配だと泣いていた。  そんな弥生の行動からすると、竹本を殺している可能性が高い。 「竹本も、同じ場所で殺したのでしょうか?」 「そこは、この情報では不明だ」  しかし、玲央名の業務日誌は、余分な事までびっしり書かれている。だから、当時、玲央名が周囲に聞き込みした内容も書かれていて、目に浮かぶかのように詳細だ。それが、今回、特に役に立った。 「玲央名さん、凄いのか……何なのか分からない……」 「裏社会で秘書をやっていた人間は、普通に見えても、かなり癖があります」  玲央名は、全ての登場人物を把握して、先入観なしで記録していった。だから、弥生の異常さが際立って見えた。 「弥生の場合は、癖なのか????」 「性質でしょうか???」  弥生の場合は、事件を起こしている事を知っている俺達にとっては、普通である事が、異常に見えるのだ。 「さてと、辰見のいる場所に近付いてきた」
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