第一章 十月に雨が降る

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 この弱いところが、三毛の良い所だ。三毛は陽だまりで眠っている猫のようだが、実はかなり仲間思いだ。そして、自分は弱いのに、仲間の為に動こうとしてくれる。 「猿に猫が懐いている……珍しい」 「夏目さんが、猿の姿をしていると、落ち着くな……行動が制限されるから……」 「そうそう、夏目さん、何をするのか分からない……」  この猿というのは俺の事だ。  俺は通常社会では死んだ事になっていて、見つからないように姿を変え、猿になっている事にした。それも、完璧な猿だ。着ぐるみではなく、この体毛は素晴らしい。 「夏目さん…………臭い」 「臭くない!風呂に入っている!そこの水道でも水浴びしている!」  しかし、先程、学校の工事を確認する為に、番犬と床下に忍び込んだ。そして、つい秘密基地を制作してしまった。そこは薄暗く、虫なども生息していたように思う。だが、秘密基地は完璧だ。 「変な所で遊ぶから、あちこち汚れています!」 「遊んでいたのではない!!ここの基礎工事を確認していただけだ」
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