第四章 十月に雨が降る 四

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 そして、俺達は裏口に来てしまったようで、表には小奇麗なレストランが建っていた。そして、パン屋も併設していて、学生が購入していた。 「職場や学校に行く方が、買ってゆくので、早朝から営業しているの」 「そうですか……」  俺もパンを買ってゆこう。  昔のキッチン喜多村は、赤字続きの店だったが、今は繁盛しているらしい。それに、厨房を覗くと、ちゃんとしたコックが料理をしていた。 「あの、貴方はこの店の方ですか?」 「そうなの!夫がそこでコックをしているのよ。それで、私はレジ係」  男性は弥生の兄で、案内してくれた女性はその妻の陽葵であった。  この二人には息子と娘がいて、大学生になっているという。今、店で陳列をしている青年が息子で、店を手伝ってから大学へ向かうらしい。 「いい息子さんですね」 「そう!!でも、貴方の方が二枚目ね……まるで役者さんみたい。あ、写真を撮ってもいいかな」  そして、道原をモデルに、アレコレ撮影していた。 「ゴメンなさい。お客様なのに。あの、パン、持って帰って。モデル料にしてね」 「いえ、構いません」
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