第四章 十月に雨が降る 四

9/16
前へ
/121ページ
次へ
 そして、俺も写真を撮られまくり、パンと果物を貰った。 「可愛い!!!!!!!この猿君」 「夏目です」  猿がパンを持って食べている姿を、ポスターにすると張り切っているが、何の効果があるのだろう。ペットも食べられるパンがあるという宣伝だろうか。  そして、道原が世間話を始めると、陽葵があれこれ教えてくれた。 「この近くにね、廣川造園という会社があってね、その庭園がいいのよ……それで、地元野菜とか売っている店があってね、そこで、義姉が働いているのよ。ここのパンは、そこでも売っているのよ」 「行ってみます。その義姉さんのお名前を聞いてもいいですか?」  廣川造園の評判を聞いてみると、中々良いものだった。しかし、義姉である弥生の事は良く思っていないらしい。 「あ、義姉には声を掛けなくてもいいよ」 「そうですか」  陽葵は、この土地に嫁に来たが、今も馴染めない事があり、その一つが近所付き合いであるという。この土地では、地元の寄り合いに参加しないと、ゴミ収集もして貰えないらしい。ゴミの収集は地区ではなく、町の管轄なので交渉すると、店の前にゴミを置かれたりしたという。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加