第四章 十月に雨が降る 四

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 そこで現在は、地区の寄り合いに参加し、付き合いを持っている。  そして、その寄り合いでは、弥生の事を悪く言っていた。それも、女性が集まると、酷い状態らしい。 「女性が悪口???もしかして、浮気の類いですか???」 「……一緒に飲みに行ったり、山菜採りに行ったり……そんなレベルだけど……弥生さんは、何というのか、そんな雰囲気ではなくて……」  弥生は男癖が悪く、誰にでも口説くような素振りをするらしい。それで、自分に気があると勘違いした男が、あれこれ誘ってしまうという。  そして、貢がせたと言って、妻が怒り店にも乗り込んできた事もあった。 「こんな事を言ったら変だけど……関わったらいけない人ね……あら……初対面の方に言うような話ではないけど」 「関わりませんよ」  陽葵は、どうして言ってしまったのだろうと、自分でも困っているようだった。でも、きっと誰かに聞いて欲しかったのだろう。 「弥生さんは、でもね、店では人気の店員なのよ。長く一緒にいたから、あれこれ……見えてしまうのかな……」 「そういうものです」  外面が完璧になる程、内面を知っている人間は警戒するものだ。
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