第四章 十月に雨が降る 四

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 宿泊施設が無かったら、このグランピングの空きを聞いてみよう。もしかしたら、突然のキャンセルなど、あるかもしれない。  俺達は、キッチン喜多村で、朝食をとると、まずは良美が消えた橋に行ってみる事にした。 「辰見の所に行きたいです……」 「分かっている。けれど、事件が気になる……」  二十年ほど前、ここでは殺人事件があったのだが、誰も気付く事が出来なかった。そして、その犯人は、この土地で普通の暮らしをしている。  車で橋まで向かうと、昨日降った雨のせいなのか、水位がかなり高かった。古い橋なので、水位が上がると、水面がとても近い。車で渡る事が怖いくらいだ。  そして、川の周辺には稲穂もあるが。稲穂の終わりは近く、そこからは森のようになっていた。  しかし、この橋は見通しが良い。障害物が無いので、ここに誰かいれば、一キロ先でも分かりそうだ。  道幅が狭いので、橋から少し離れた横道に車を止めると、橋まで歩いてみた。 「道原、橋の下に行きたい」 「夏目さん、自分で歩かないのですね。道がぬかるんでいて……足が埋まりそうです」  しかし、道原は準備がいい。
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