第四章 十月に雨が降る 四

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 道原が履いているのは長靴で、しかも、かなり長いものだ。 「ここは滑るので危険です」 「そうだな」  泥土はかなり滑りやすく、水位の増した川は、小さくとも威力がある。それに、整備されていないので、川岸の境界線がよく分からない。ここに落ちてしまったら、上がる事が出来ないだろう。  堕ちた場合は、浮かぶ事だけを考えて、流されるしかない。 「つまりは、この川に落ちても、事故で済む。それだけ、事故になり易い」 「俺達も危険ですよ。夏目さん泳げない」  もしも、良美の遺体が川で発見されたとしても、それは事故で済む。それに、良美は水位を知りたい理由があった。 「泳げる!苦手なだけだ!」  しかし、この川で溺れて、遺体が見つからないという事があるのだろうか。 「ここ、海まで何キロあるのだ」 「海までは、かなり距離があります」  ならば、余計に遺体が見つからなかったのはおかしい。 「そうか……いなくなった家庭教師は、きっと良美の遺体を見つけた」 「そして、隠した?」  だから、弥生は家庭教師を殺すしかなかった。 「弥生は小柄で非力な女性」
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