第五章 十月に雨が降る 五

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「これは、面白いですね……参考価格がある。こんな庭が、ウチにも欲しい」  この庭園は、一日見ていても飽きないだろう。それ程に広い。そして、様々な庭が用意されていた。 「和風ばかりではないのか……」 「宮殿の庭シリーズもあります」  しかし、俺的には和風の庭がいい。特に、井戸がある庭など、夜怖そうで面白い。それに柳の組み合わせも良い。  柳の枝が、まるで牛の尻尾のように揺れて、蠅が寄って来ない感じがする。  そして歩いて屋敷の前まで戻ったが、中に人がいる感じが無かった。 「辰見は、ここにいますか?」 「呼んでみるか……」  玲央名を追い掛けて辰見が来たとすると、廣川家にいるのではないのか。 「辰見!!辰見!!」 「物理的に呼ぶのですか!それも、その姿で!」  ここには誰もいないので、猿が喋っているとは思わないだろう。 「あれ、夏目さんですか?」 「本当に出て来るとは思わなかった……」  辰見は塀の上から、ひょっこりと顔を出していた。すると、三毛は壁をよじ登り、辰見に抱き着いた。 「良かった!辰見は無事だ」 「三毛????どうした??????」
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