第五章 十月に雨が降る 五

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 三毛は兄が失踪しているので、辰見を重ねて見ていたのだろう。  そして辰見は塀から降りて来ると、仕方なさそうに俺を見ていた。 「辰見、どうして、俺を見てがっかりしたような顔をする?????」 「がっかりというのか……ああ、来てしまったと思ったというのか……」  辰見は俺達を、屋敷の離れのような建物に案内してくれた。しかし、その建物はどこか物置だ。  屋敷の裏手、納屋の横にあるので、馬小屋にも近い。 「この建物は?」 「亜子さんが、俺に用意してくれた部屋です」  この周辺の宿泊施設はグランピングしかないが、辰見は何の準備もして来なかった。だから、亜子が離れを提供したらしい。 「歓迎されていないのか?」 「母屋の客間を使用してもいいと言われたのですが、あの母屋、幽霊でも出そうなくらいに怖い」  そこで用意されたのが、この離れだったらしい。 「ここは、元使用人が住んでいたもので、その元使用人は、今は別の土地で余生を送っているそうです。元使用人、元お庭番のような忍者の子孫だったとか……違うとか……まあ、そこはどうでもいいのですが……」 「玲央名さんとは会えたのか?」
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