第五章 十月に雨が降る 五

9/15
前へ
/136ページ
次へ
「夏目さん、濡れた場所に地図を置かない!」  この造園は、かなり広い。しかも、隣接しているのは森や山で、その境界線が分からない。  だが、条件を揃えてゆくと、限界の場所が存在する。 「まず、弥生。造園の職員に弁当を運んでいたが、森や山には詳しくない。つまりは造園の中に限定」  だから、近くまで車で行ける場所だ。その条件で、更に、現在まで掘り返されていない場所はかなり限定されてくる。 「車で行ける。掘り返されない場所。出来れば、永遠に掘り返されない」  そして、義叔父が失踪したのは弥生がしてしまった事を知った可能性が高い。 「ここに観音像がある。これは、いつ設置された?」 「確か、失踪が相次いだので建てたと聞いています」  つまりは、失踪の後に観音像を建てたのだろう。 「まさか……ここ、造園地区の入り口です。毎日、何人も通っているのに……」 「灯台下暗しみたいなもので、見ているモノは、見えていると勘違いする」  すると、辰見は玲央名に電話して確認していた。  そして、洋館に到着する前に,返事が戻ってきた。 「四体あったそうです」
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加