第六章 夜に咲く花も在る

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「その土地では、隠れて行われている儀式があり、子供が産まれると犬を一匹買ってきます」  その犬は、子供と一緒に育てられるが、何故か子供が大病や大怪我をすると消えてゆくという。 「犬の子孫は、雨の日に生まれ、雨の日に死ぬといわれます……私は、大雨の日に生まれました」  そして亜子が産まれた日にやってきた犬は、翌日にいなくなった。 「そんなものは迷信だと思っていましたが、息子二人も雨の日に生まれました。犬も買っています。犬は五歳まで生きて消えました。そして、父は、雨の日に亡くなりました」  他に亜子の叔父は、生まれた時が晴れだった。そして、検査の結果、一族の血を引いていなかった事が分かった。それは、兄弟だというのに不思議な現象だった。しかし、当事者同士は納得し、叔父は家から出てゆき警察官僚になった。  それは一族の習わしで、そういう子供には、外で出世できるだけの援助を行うというものがあったのだ。 「この土地には、今も迷信が生きている……」 「……雨……亜子さんは、玲央名さんと出会った日が、雨だったから信じたのか……」
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