第六章 夜に咲く花も在る

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「それだけではなく、玲央名さんがここに来た日も雨だった……そして、犬を買ってきたら、翌日にいなくなった……」  逆に、叔母の良美は迷信を信じていなかった。そして、自らが失踪してしまった。 「全部、真実は分からない」 「そうです」  あれこれあるが、亜子が伝えたかった事は、この土地には狂気があり、その狂気よりも怖い謎があるという事らしい。 「貴重なお話をありがとうございます」 「はい。夕食はこちらで用意するので、拾い食いとかはしないでね」  拾い食いはしないだろう。 「夏目ちゃん……」 「夏目でいいです。もしくは、夏目さんでお願いします」  きっと亜子は姫様だ。そして、どこかに天女がいる。 「夏目ちゃん、私は時々思うの。犯人が罪を償ったとしても、亡くなってしまった人は戻って来ない」 「そうですね」  罪と罰は、生きている者どうしのルールで、死者には関係ない。だが、生きてゆくには、罪と罰のルールが支えになるのだ。 「綾人さんは、きっともういない。分かっているのに、私は今も帰りを待ってしまう……」 「だから、生きている者には犯人と、理由、事実が必要です」
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