第一章 十月に雨が降る

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 今までの梅花ならば、負けても仕方が無いで終わっていたが、最近は逆境を楽しんでいるように思える。それは勝つ楽しみを覚えたからかもしれない。 「ここは、各人が専門家を招いて授業を再開します」 「先輩とか上司が講師か」  しかし、それも面白い。 「いえ、尊敬に値する人が講師です」  それは、暗に先輩や上司というだけでは、尊敬していないと言っている。 「ハハハハハハ……それは、いいね。俺も連れて来るか」 「ヤバイ人は止めてください!夏目さんの類友も不可です」  しかし、道原も笑っていた。 「だが、護衛なしで大丈夫だったか、ここ???」 「そうですね……まずいですね……ハハハハ」  護衛なしと言ったものの、完全に自衛というのは難しいかもしれない。  道原は裏社会の権力者の息子だが、六男なので、跡取りとしては相手にされていなかった。しかし、最近の道原は、父親のお気に入りの一人で、かなり頼りにされている。だから、常に他の兄弟からは命を狙われる。  つまりは、どこにいても危険だ。  他のメンバーも笑っているので、道原の気持が分かるし、似たような境遇なのだろう。
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