第六章 夜に咲く花も在る

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 だから再発するのだと言いたいが、亜子は違う事を思っているのだろう。それは、犯人が悪いのではなく、この土地に縛られてしまった事が原因だという事かもしれない。  しかし、元公安の性なのか、犯人ははっきりさせておきたいのだ。それに、それでも罪は罪だ。 「この土地に姫様や天女がいて、悲しみがあったとしても、罪は罪です。罰を与える為ではなく、見つけられない罪を、放置しておけない。そこにも、悲しみがあるからです」  少なくとも、良美の子供は、母親の帰りを待っている。待ち続ける悲しみを、終わらせる事も心だと思って欲しい。そかしそれは、俺にとっては正義とか悪ではなく、心の問題だ。 「うん。夏目ちゃんは、ちゃんと見ているのね……分かった、行ってらっしゃい」  どこに行けというのだろう。  そして、庭園見本園の地図を渡してきたので、行って来いという意味かもしれない。 「行ってきます」  道原と一緒に外に出ると、辰見が庭を案内してくれた。  しかし素振りは案内なのだが、辰見の意識は事件に向いていた。 「亜子さんは、今も綾人さんを探しているのか…………」
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