第六章 夜に咲く花も在る

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「その芝生も、廣川造園のものです。そこは本職ですから、力が入っています」  俺が芝生で転がっていると、道原が嫌そうな顔をしていた。  そして案の定、全身が芝だらけになったので、その状態で道原に飛びついた。 「夏目さん!今度は、洗濯機に入れます!」 「ちゃんと風呂に入る!」  確かにいい芝生だ。この弾力と密集は、他には類を見ないいい出来だ。  そして、片隅にあるブランコがノスタルジックな気分になる。しかも、ブランコは片隅だと思っていたら、その先には下った芝生があり、ここは頂上のブランコなのだ。 「大昔のアニメにあった、山の上のブランコ」 「死ぬほど怖いですね」  ブランコを大きく漕ぎ出すと、空しかない。つまりは地面が見えない。これは、かなりの恐怖で笑うしかない。 「ケケケケケケケケケ」 「変な笑い声を上げないでください、つられて笑ってしまいます!」  怖いのに笑ってしまうので、何の感情なのか麻痺してしまい、楽しくなってしまうらしい。  笑いの効果は絶大だ。 「三毛、一緒にブランコに乗るぞ」 「嫌です」
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