第六章 夜に咲く花も在る

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「……親父が言うには、弥生さんは、自分が一番の人気者である内は、無害な存在で、むしろ善良な市民になるらしい」 「そういうものなのか……」  弥生は一番人気をキープする為に、日々の努力を怠らない、いい店員になっていた。  試食のサンプルも早朝から自作し、手作りのマップや、楽しい過ごし方なども看板も作っている。しかも、この付近の民謡を歌い、かなり美味い。 「女性は不思議で怖いです」 「そうだな」  亜子も年齢不詳で、とても不思議な存在だ。  そこで、近くの地元物産店まで行ってみると、ペットは入店不可になっていた。 「うぬううう!!」 「夏目さん、唸らない。歯ぎしりしない!!」  俺が、表で素直に繋がれていられると思うな。  道原が用意していたリールに繋がれ、表にいる犬と一緒に置かれると、俺は地団駄を踏んでしまった。  すると、俺の怒りを察したのか、犬は尻尾を丸め、怯えた顔でこっちを見ていた。 「ごめん。太郎。君に問題はない」 「勝手に犬に名前を付けない!仲良くしない!」  道原は、さっさと店内を確認してくればいい。
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