第六章 夜に咲く花も在る

14/17
前へ
/151ページ
次へ
「あ、犬の後ろに隠れた!!可愛い!!!!」  しかし、写真を撮っても良いが、あちこちに芝が付いている。太郎が俺を舐めているが、この光景を道原が見たら、又怒るだろう。  俺の毛は、すぐに絡まるので、ブラッシングが大変なのだ。だから、無暗に濡らしてはいけない。  そして、周囲を見ると、レジに並んでいる道原が、怒ったように俺を見ていた。 「うぐぐぐぐぐ」  声には出せないが、これは俺が悪いわけではない。だから、睨まないで欲しい。 「夏目さん!」 「え、猿の名前、夏目さんなのか……面白い!!」  道原は大きな袋を背負い走って来ると、俺をタオルで拭いて肩に乗せた。 「わあ、夏目君、飼い主が来ると安心している!!」 「あ、笑った!!!可愛い!!!!!」  安心したわけではない。買ってきた品物の中に、酒を見つけたので笑っただけだ。  何故、酒があるのか分からないが、後で道原の目を盗んで飲んでおこう。 「夏目さん、行きますよ」 「うん、うん!」  声を出せないので、頷いておく。  そして、離れた場所から、店を振り返った。 「弥生さんは、あの女性だな」
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加