第六章 夜に咲く花も在る

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「評判は上々で、ここで悪口を言う人はいませんでした。弥生さんは、今は実家を出て、中古の一軒家を買って住んでいるそうです」  弥生は離婚していてシングルマザーとして、二人の子供を育てた。その子供も成人したので、実家を出て、家を購入したらしい。  そして、その家の近所に住んでいるという女性からも話を聞けたらしいが、真面目で几帳面で、評判は良かった。 「悪い噂のせいで、色眼鏡で見ていたが、それは田舎でシングルマザーという状況からくるものだったと、皆がフォローしていました」  女性とうのは、過去を消せる生き物なのかもしれない。 「弥生は、別人みたいだった」 「同一人物ですけど……そうですね」  でも、俺達が会った弥生は、良美を突き飛ばした女性とは別人のように思えた。この人間の思い込みというのは凄い。俺も先に、こっちの弥生を見ていたら、夢で見た過去を否定していたかもしれない。 「人は……別人レベルまで、変わるものなのでしょうか?????」 「それとも、俺達が騙されているのか????」  俺は、少し離れたバンチに座り、道原が買ってきた米ジュースを飲むと、物産展の様子を観察した。
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