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第三章 十月に雨が降る 三
辰見玲央名の事務所を訪ねて来た女性は、人形のように綺麗だが、何か訳アリのようで、依頼内容以外を喋る事は無かった。
『こんなに綺麗な女性が、裏社会を無事に歩いてきたという事が不思議だ。しかし、彼女を見ていると、それも納得できる感じがした。この美しさを人間と呼んでいいものか。そんな造形美の中に、彼女はいるのだ』
そして、玲央名は亜子に傘を渡して帰そうとするが、亜子は首を振ると、そのまま雨の中に入って行った。
「駅まで送っていかないのか?」
「通りに車を待たせていると言ったらしいです」
車に乗るにも、ずぶ濡れではまずいだろう。
しかし、亜子は雨の中を帰って行った。
そして玲央名は、依頼を受けるか判断する為に、廣川家を訪ねる事にした。
「玲央名さんが廣川家に到着すると、何かが色々と変だった。それに、亜子さんは無表情で無関心を装っていたが、全てを怖がっていた」
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