山登り

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山登り

 2025年8月10日世界中でこれまでに人類が経験したことがないほどの巨大地震が発生した。  家は地震で潰れたり、電車や車バスは地震で横転した。そして多数の死者が出た。  建物はほとんどひびが入っていた。そして何より驚いたのは道路は地震のせいでパックリと亀裂が入ったところがたくさんできた。  その道路の亀裂から何やら謎の植物のツルがどんどん伸びてきたのだ。  そのツルは道路の亀裂からどんどん伸びて一つの山になっていった。  その山はとても成長が早かった。  道路の亀裂から伸びてくるツルは都会に集中していた。  田舎の方は謎の山の出現は今のところないらしい。 2025年の8月10日に生まれた僕はあれから50年経って新宿のオフィス街で働いている。  そう、世界中で大地震が起きた日が僕の誕生日だ。  その時、僕の両親は死んだと聞かされた。 僕を守って亡くなったのだと、僕は祖母に引き取られて大人になるまで大事に育ててもらった。  今、両親も祖母も亡くなって僕は天涯孤独だった。    僕は今、新宿のオフィス街のビルの6階にある保険会社で働いていた。  昔は陽当たりが良かったらしい僕の会社の窓は地震でできた山で覆われている為、光が会社に入ってこなくなった。  全ての窓が山で囲まれて何だか会社は暗くじめじめしているような感じだった。  地震でできた謎の山は成長が著しく早かった。  僕の会社の周りの会社の窓も山があるせいで光が入ることはなかった。 成長が著しく早い山は遂に日本一大きいと言われている富士山さえも越してしまったのだ。  僕は自分の会社の窓から見える謎の山に登ってみたくて仕方がなかった。  その山の頂上へ登ってみたい。  大学で登山サークルだった僕は仕事中でも窓から見える山に登りたい衝動が抑えきれなかった。  でも、毎日ニュースでアナウンサーが言っていた。「地震から生まれた山をたくさんの人が登りますが、誰も山頂まで登った人はいない危険な山だから登らないように」と。  その山は滑り易く岩が転がってきて危ないというものだった。山頂まで登れなかった人はみんな怪我をして帰って来ていた。 それでも、僕は窓から見える成長が早い山を登ってみたい。不思議な地震の時に生まれた山〜。 僕は誰が反対しても山に登りたいと言う僕の気持ちが変わることはなかった。 続く
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