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山登り【休日】
やっと会社が休みの日になった。日曜日だから新宿のオフィス街のあの山はたくさんの人が都会にできた珍しい山を登りに来るのかもしれない。
僕は大きなリュックにお弁当や水筒遭難した時の為のカロリーが高いお菓子や毛布など必要な物は全てリュックの中に入れた。山頂で撮ろうとカメラも用意していた。
「さあ、そろそろ行くか」
僕はこの日をずっと楽しみにしていた。
地震で割れた道路の割れ目から伸びた植物のツルそれがどんどん伸びて山になり都会のど真ん中で成長をしている山。
僕はそんな神秘的な山にずっと登ってみたかった。山頂に辿り着いた人がいない山〜僕の心はわくわくしていた。
私は電車に乗り新宿駅で降りた。
そしてオフィス街にあるいつも私が働いているビルの目の前にある山の中に入った。
当然危険な山として警備員がこの山に入るのは禁止だと山の登山の入り口で止められた。
それでも私を含めた皆んなは警備員が止めるのを聞かず警備員を押し退けて山の中に入って行った。
そして私もこの歳で若い人と同じように警備員が止めるのを無視して山の中へ入った。
一度切りの人生私は後悔したくなかった。
そして地震でできた山の成分は何んなのか?私は興味があった。
私はどんどん山の中に進んで行った。山の土は思ったよりぼこぼこしていた。そのぼこぼこした土のせいで躓く人がほとんどだった。
「痛〜また躓いた。こんなにぼこぼこした土だと頂上まで時間がかかるなー」
それでも私は山頂を目指して歩いた。躓きながら一心不乱に歩き続けた。
するとやっと私は自分が山頂の近くまで来ていた事に気がついた。
「あそこだやっと山頂に着く私が世界で一番早く謎の山の山頂に辿り着いた中年おじさんとして歴史に刻まれる事になるだろう。
周りには誰もいない躓いてばかりの山だからきっと皆んな諦めて山を降りたんだろう。あと少しだ。あと少しもう少しで山頂だ」
私は無心になって山頂まで歩き続けた。
「やっと着いた山頂だ私が世界で一番に謎の山の山頂に辿り着いたんだ。写真だ、写真の準備だ」
私はリュックからカメラを取り出そうとした。
その時、私は山の地面が崩れていくのを感じた。
そして地面に穴が空き私は山の中にひきづり込まれた。
「これは?どういう事なんだ?」
私は山の地面を見た。そして全てがわかった。
この山は死者が作った。死者の山だった。
地面は2025年8月10日の巨大地震の時、亡くなった死者の遺体が道路の割れ目に落ちてそれが養分となって道路の割れ目から謎の植物のツルが伸びて来たんだ。
山の地面は良く見ると人の形になっているその上に緑の苔のような植物で覆われている。
私達が躓いていたのは巨大地震で死んだ人の鼻とか腕だったのだ。人の型をした地面はぼこぼこして皆んな躓いていたんだ。
その時の死者が重なりそれを養分として吸って山になり大きくなっていったんだ。
この山は死者でできている。
そして僕も山の地面から伸びて来るツルに身体を巻かれ山の中へ引きずり込まれていく。
私もこの山の養分になって山としてこの地面の下で遺体になっていくのだろう。
人間を誘い込む為に……
この山は絶対に山頂まで登ってはいけない危険な山だった。
完
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