クレアの決心

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クレア以外の村人、48人は、全員、ベイルと同じ状態だと 確かめたクレアは、自分の家に戻り、ベイルが横になっているベットの傍で ずっとベイルの手を擦っていた。 12歳の時から、エドガーの手伝いをしていて、近年は、寝込む事が多かった エドガーの代わりに、村人を診察し、手当てをし、薬も出していた。 だから、死んだ人も、多く見て来たが、脈も無く息もしていないにも関わらず 死後硬直が無いと言う、不思議な状態に、戸惑っていたのだ。 「私の知らない、変な病気で、こんな事になっているのだろうか?」 クレアは、考えられる限りの、あれこれを、想像していたが 王都まで往復した一日の疲れで、ベイルのベットに突っ伏したまま 寝てしまい、隣のサム爺さんの鶏の声で、目を覚ました。 顔を上げると、ベイルは、昨夜のままの姿で、横たわっていた。 「夢じゃ無かったのね」クレアは、悲しげに呟き、ベイルの頭を撫でる。 母に似たのか、ベイルは病弱で、薬が手放せない子だった。 母が死んでからは、クレアが、母の代わりになって、面倒を見て来た。 ベイルも、そんなクレアを、母の様に慕っていた。 小さい頃は、酷い喘息の発作で、何度も死に掛けたが 13歳になってからは、発作も出なくなり、体力も付いて来た。 「これからは、普通の子供と同じ様に、元気になって、走る事だって出来る」 エドガーも、そう太鼓判を押してくれたのに、、、。 クレアは、ふらふらと立ち上がり、外に出た。 外は、まだ薄暗かったが、餌を呉れと、騒がしい鶏の為に 傍の畑の大根を抜き、その葉っぱを刻んで トウモロコシや、麦の粉と混ぜ鶏たちにやる。 餌に、夢中になっている鶏の巣から、卵を取り出す。 腰を痛めた、サム爺さんの代わりに、クレアが毎朝、やっていた。 その卵を見て、クレアも、お腹が空いている事に気付く。 昨日、昼食に、サンドイッチを食べてから、何も食べていなかった。 その卵で、オムレツを作り、パンに乗せ、お茶を淹れて、一緒に食べる。 だが、何時もの美味しさは無かった。 その間に、太陽が昇り、村は明るくなった。 クレアは、玄関先で、ぼんやりと、いつもの朝の村を見ていたが 「な、何なの?貴方達」と、驚きの声を上げる。 いきなり、クレアの前に、見た事も無い、白い衣装を着た美しい人と 王都で、一度だけ見た事の有る、神官の服装をした、若い男が現れたからだ。 「私は、天帝様の使いで来た、エリザと言う者です」 女の人は、鈴を転がすような、美しい声で言った。 「天帝様?その使い?って、、、貴方、もしかして天使?」 驚きながらも、そう聞いたクレアに「そうです、これが証拠です」 エリザと名乗った人は、背中に、真っ白な羽を広げて見せた。 確かに、教会の絵で見た事の有る、天使の姿だった。 「天使様なら、この村の皆が、何故、こんな状態なのか、分かりますよね」 クレアは、真っ先に、その事を聞く「勿論です」 「じゃ、じゃ、この状態を、治せると?」クレアは、咳き込むように聞く。
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