アルプス

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金曜日の夜。 いつものように二人でソファに座り、テレビを見ながらくだらない会話を交わす。 「『アルプス一万尺』って童謡あるやん?」 君は唐突に言った。 「あるなぁ。」 テレビを見ながら、私は気だるげに答える。 「あれって『子ヤギの上で』踊るんやろ?」 今日も君は変なことを言う。 「子ヤギ?小槍じゃなくて?」 私がそう言ったら、君は目を見開いた。 「え、そうなん!?よかった~ヤギさん可哀想ってずっと思っててん。」  本当に、君は。 「今までずっとって、あほか。」 君は照れたように下を向く。私は再びテレビに目線を移す。 「なんか、山登りたくなってきた。明日山登りに行こ!」 君はいつも唐突だ。 「ねぇ、急すぎ。」 でもこれは君のいつもの調子で。 「いいやん?行こや、アルプス山脈!」  本当に、 「あほか、アルプス山脈はヨーロッパや。」 抜けてるところも。 「えぇ!」 驚く顔も。 「近くの高原でリフトにでも乗ろ。」 嬉しそうな笑顔も。 私は、そんな君が。 君とのこの時間が大好きだ。
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