6人が本棚に入れています
本棚に追加
暑さが漸く和らいで、時折肌寒い風が町を駆けるようになった。モウフも繁忙期を越えて、机に向かう時間が増えた気がする。
僕も丁度、夏の課題を提出したところだった。
「次の公募はいつの予定なんだ?」
「お前はいつもそんな話ばっかりだな」
モウフは僕を見て、目尻を下げる。
「これまでの作品を確認しているだけさ。公募に出すとかは、具体的に考えてない」
中途半端な回答に、僕はまたがっかりした。
確かにモウフは、マウスホイールを弄るだけで、キーボードには全く触れていない。
「モウフ……僕がなんで、イラストレーターになりたいか、知ってる?」
「お前は昔から絵を描くのが好きだったからなあ」
「僕は、モウフの小説の表紙を手掛けたいんだ。かっこいいだろ? 兄弟で芸術家だ!」
すると、モウフは嘆息と共に微笑んだ。どこか、憐れむような目だった。
「目の前にいる奴のことなんて、もう気にしなくていいんだよ。もっと広い世界を見るんだ、ジャンパー」
最初のコメントを投稿しよう!