チャイムの音が、

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 モウフは、自分の夢を妥協して、中小企業の正社員になった。  両親は自称・音楽家で、定職に就いていなかった。そのせいで、授業参観なんかの学校行事、事ある毎に学校で書かされる感謝の手紙など、例を挙げればきりがないほど、僕らは肩身の狭い思いをしてきた。更には、収入なんて安定して得られるはずもなかったから、習い事や旅行なんてもってのほか。特別なことと言えば、両親のライブに渋々付き合わされる程度だった。  学校の中の世界しか、まともに見ることのできなかった僕らの人生は、金をかけて得ることのできる経験を持つ「普通の人生」と、段々と離れているのだと気が付いた。  そんな僕らが見つけた、金のかからない夢。それが「小説を書くこと」と「絵を描くこと」だった。けれどそれも限界がある。プロになった人を見れば、立派な学歴や、名のある師匠の下で修業した経験がつきものだ。  モウフは社会人になった時、僕を連れて家を出た。そして、僕を通信に通わせてくれている。僕のバイト代からも学費は出しているけれど、ほとんどモウフの給料からだ。 「お前には、夢を諦めるようなことはしてほしくないんだ」  その代償に、モウフは自分の夢を諦めた。
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