チャイムの音が、

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 それからの創作活動は、軌道に乗ると思い込んでいた。しかし、構想や下書きを基に描き進めようとすると、筆が止まることが多かった。構想の段階では気が付かなかった穴が次々に見つかるのだ。  モウフも同じような悩みを抱えているようだった。それでも、帰宅後の進捗報告は、変わらず続けていた。一人でイラストに向き合わなければならない苦しさはあったけれど、その習慣のためなら、なんてことなかった。  残暑もすっかり退散して、モミジの葉が僅かに色づき始めた頃だった。  初めの異変は、モウフの早退だった。 「執筆がしたくて早退したのか?」と冗談交じりに尋ねると、モウフは不器用に笑って「まあな」と小さく答えた。よく見ると、青い顔をしている。 「具合悪いのか?」 「いや……ああ、まあ……」  モウフは、吐息に混じらせるように答えた。  モウフの早退は、その日から毎日続いた。一週間もすると、とうとう出勤もしなくなったどころか、外出さえ嫌がるようになった。  何度も病院に連れて行こうとしたが、「病院じゃない」と言って聞かない。体調が悪そうではあるのだが、就寝時間以外は机に向かって執筆している。 「無理するなよ! 元気になるのが先だろ!」 「大丈夫……これが出来上がったら……大丈夫だから……」  僕が声をかけても、モウフはパソコンの画面を見つめたまま、うわ言のような返事しかしない。  遂に、帰宅後の進捗報告会もなくなってしまった。モウフの体調の件もあるが、それ以上の異変があった。  僕がバイトから帰ってくる度に、執拗に怯えるようになったのだ。
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