黎明

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眉を寄せた表情を浮かべ、視線を向ける姫。それらを拒絶するかのように、膝の上で手を握りしめている。 一向に盃に手を伸ばそうとしない姫に、白髪の巫女が背を曲げ縮み寄り耳元に手を添え。 「麒麟の姫様、どうぞお手に取って下さい」 声が漏れぬよう言い促す。 その場にいる全員の視線が姫に向けられている。無言の圧力のような強い緊張に襲われながら、変わらず硬く見つめたままわずかに首を振り、手を伸ばすどころか、背が退()いている。
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