黎明

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「姫様、お飲みになります」 清風の落ち着いた張りのある声がピシャリと言挙(ことあ)げする。 蝋のように硬まり動かぬ姫。唾を飲む喉元だけが微動する。 冷えた空気がその場を埋め、誰も微塵も動かない。蝋燭の炎の揺らぎさえ止まったかのように。 姫の目が周囲を見るように動く。 麒麟が見上げると同時に意を決したのか、おずおずと震えそうな手を伸ばし、両手で持ち上げ、胸元で止まる。 清風が再び「姫様」 柔らかく発する。
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