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「飲まないとやってらんないでしょ……」
お酒を飲むことでしか脳裏に埋め尽くされる彼のことをかき消す方法がなかった。
だって、ほら目があったって彼はあたしのところにくることもなかった。
「あたしのことが好きだったらまた言って」なんて言ったくせにずっと好きだったのは自分だったなんて笑える。
彼はもうなんとも思っていないってのにね。
流れる水を見て心を落ち着けるけど、もう帰りたくなってしまった。
体調悪くなったってことにして、もうかえらせてもらうかな。なんて思うけど、お祝いの席だし変なことはしたくないな……なんて思って、お手洗いのドアを開けた先に、通路の壁に寄りかかっている人がいるのが見える。
さっきと同じのうに目が合った彼は言葉は発さないけど、微動だにしない。
そうか、あたしのことを待っているんだと気づく。
「随分な飲み方するじゃん。ずっとそうなの?」
「え?」
「俺はお酒飲むようになったお前のこと知らないけど、放っておけないような飲み方してるから気になった」
「そりゃあ、あたしたちはお互い10代の頃しか知らないからね。でもお酒強いから大丈夫。心配ありがとね」
そのまま彼の横を通り過ぎようとするとバシッと腕を掴まれる。
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