偏見の理由と深まる絆

1/1
前へ
/5ページ
次へ

偏見の理由と深まる絆

 仕切り直しの食事中、一ノ瀬さんが思い出したように語り出した。 「……今でも五十嵐さんと繋がりがある元同級生から聞いたんだけど、五十嵐さんのご両親、偏見がひどかったみたい。片親で育った子はろくでもないとか……」 「じゃあ五十嵐さんのあの言動は、親の影響で……?」  天野さんのその問いに対して、一ノ瀬さんは小さく頷いた後、更に続けた。 「まぁ、中学生の時は陰口叩くくらいだったんだけど……なんでも、大学の時に片思いしてた相手が、漫画好きな子と付き合ったとかなんとか……」 「それで漫画好きな夢咲さんに当たったのか……なんだ、ただの逆恨みじゃないか……」  月城さんは呆れたようにそう言って、ため息をついた。  ふと、八神さんが私の顔を心配そうに覗き込んできた。 「災難だったね、夢咲さん……」 「う、うん……でも、八神さんが助けてくれて助かったよ……」 「へ?オレ、なんかしたっけ?」 「えと……わからないならいいよ……一ノ瀬さんも月城さんも、ありがとうね?」 「お礼なんていいよ、私も中学生の時から、あの人には腹立ってたから……」 「そうそう、俺らは言いたいこと言っただけなんだから、夢咲さんが気にすることないって」  落ち着いた態度で言い返す2人の傍らで、天野さんが縮こまっている。 「いや……2人は充分凄いよ。オレなんて五十嵐さんが怖くて、何も言えなかったし……」 「気にすんなって悠。お前は場の雰囲気を変えてくれたんだし」  そうフォローしながら、月城さんは天野さんの背中を優しく叩いた。  それから5人での食事会は和やかに進み、すっかり友達として打ち解けた私たちは、解散前にお互いの連絡先を交換することにした。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加