289人が本棚に入れています
本棚に追加
00
俺は、美人で少し我儘な6歳年上の姉と天然で国宝級のピュアである3歳年下の妹に挟まれた長男だった。
異性を姉弟に持つと大変だと聞くが、然程苦戦はしなかった。
それが当たり前であり、日常的だったからだ。
だが、俺達の家庭は和気藹々とした家族円満ではない。
陸軍に所属していた父は、酒癖が悪く酔うと理不尽な文句ばかりを怒鳴り散らし、母に酷いDVを行なっていた。
それに耐え切れず、母は幼い頃に俺達を残して、
実家で首を吊って自殺してしまったんだ。
ほんの一瞬だけ心を病んだあの男は、世間体からの当たりを俺達が生まれたせいにして、姉や俺に酷い暴行を加えるようになった。
姉はその辺で年上の彼氏を作り、16歳でさっさと家を出てしまったが、残った俺は妹に被害が無いようにと父の気を逸らしながら、その暴行をこの身に受けていたんだ。
別に良かった…
妹が怪我をしなければそれで…。
日々ボロボロの身体で過ごしていた15歳の頃、部活から帰ったら、妹の叫ぶ声が聞こえ急いで自宅に入れば、
実の父親に犯されそうになっていた妹がいた頃に、俺の理性は途切れた。
気付いた時には、血だらけで息を絶えた父親と身を縮めて震えている妹が居て、俺はいくつかの指の骨が折れた手を振るっては、其の胸ぐらを掴んだ。
" 散々…俺等をサンドバッグの如く扱ったくせに、テメェはさっさとくたばるのかよ!?起きろよ!!クソ野郎!!!!! "
どんなに言葉を発しても、殴っても、親父は目を覚ますことは無かった。
この時のショックで、妹は声を発することが出来なくなった心因性失声症になり精神病棟へと入院をし、俺は父親殺害の罪は背負ったが、少年法によって守られて少年院に送られたんだ。
何故此処に来たのかと、同じ年の奴等に言われたから
" 父親撲殺したから "と言ったら、誰一人俺に話しかける者はいなくなり、少年院は至って静かな環境で暮らしていたと思う…。
途中までは…。
30代の役員の男が、男好きだったらしく…
目をつけられた少年は、度々其の男に弄ばれていた。
俺も少し、美人の母の影響で容姿は良かったらしく、その男に個別の部屋へと誘われたんだ。
" 氷のような君が可愛くて仕方ないよ。可愛がってあげる… "
" ……はっ、なにオッサン。俺が抱けると思ってんの? "
" え…… "
" 死ねよ…カス "
元々喧嘩に慣れていた事もあったし、油断していた男は簡単に床へとうずめる事が出て来て、
その男の、股間をひたすら蹴り続けて玉が潰れて使い物にならないぐらいは蹴った。
異変に気付いた他の人達が来たが、俺の乱れた服装と股間だけ血だらけの男を見て察したのか、大きな騒ぎにはならなかったんだ。
いや…
少年院だから、警察も見てみぬふりをした。
如何でも良かった……。
この世に呆れ、18歳を過ぎてから少年院を出て、工場勤務の3交代で仕事を始め、
病院にいる妹を迎えれるぐらいの貯金は溜まったから、20歳の頃から一緒に暮らすようになった。
妹は徐々に笑顔と声を取り戻していたが、無理に笑ってるように思えて仕方ない。
そんな妹と暮らしながら、時折姉と連絡を取っていたが…。
仕事場が良くなったのだろう。
俺が20歳の時に、姉は店の前で気の狂った常連客の男によってメッタ刺しにされて殺された。
マジで、姉を殺したやつに同じ目に合わせてやりたがったが、既に刑務所に入ってそれは出来ないで終わった。
姉を失い、更に妹は現実逃避をし" 二次元 "と呼ばれるのにのめり込んで好きだったらしく、
特に王女や王子が出てくる作品を度々見て、ゲームもしていた。
" こんな、人と…いつか結婚したい "
" ……出来るといいな。兄ちゃんは、応援してる "
" うん!! "
見た目より思考が幼い妹だったが、夢を語る時は目をキラキラさせていたから、その顔を見るだけで仕事を頑張る気力になっていた。
妹と暮らし始めて5年後…。
夜間の仕事を終えて家に帰ると、妹がソファの下で膝を抱えてることに気づき、どうしてそこにいるのか…声をかける前に、テーブルの上に置いてあったものに気づく。
" は……? "
それは妊娠検査薬と呼ばれるもので、箱に書かれていた印を説明を見て、戸惑う。
" お前……いつ……… "
ずっと恋人がいないことを知っていたから、
理由が分からず戸惑えば、妹は泣きながら告げた。
" ずっと…生理来なくて…。検査したら…赤ちゃん、出来てた……。私…覚えてなくて、あの時……数人、いたから……。怖くて…… "
" っ…………もう言わなくていい… "
妹は、俺が仕事中に夜間にコンビニに行ったらしい…。
だが、ホストの男達に店へと引き込まれた後酒を浴びるように飲まされ、知らない場所で複数の男に無理矢理されたと口にした。
既に気付いた時には生後3ヶ月を過ぎていたし、妹は子供に罪はないからと産む決断をして、
俺もサポートをすることにしたが、それだけじゃ俺の気持ちは収まりきらなかったんだ。
妹がよく行くコンビニに立ち寄って、本を読みながら目星がつく男を探した。
すると直ぐに、似たようにコンビニにやって来る一人の弱そうな若い女をターゲットにしてるのを見て、店に連れて行く前に彼等を止めたんだ。
" 誰だ、テメェ…… "
" ウチの妹が随分と世話になったようだ "
" は? "
" 同じ扱いを……してやろう "
4人いた男の内3人を殴って気絶させた後首謀者のような若い男を、裏路地に引き込んでその身体を無理矢理抉じ開けた。
" …あ"っ、ぁ、ぃ"っ……!やめ、やッ…! "
嫌っている男を抱くのは吐き気がする程気分は悪かったが、妹が犯されたようにこいつの口に酒を突っ込んで酷く酔わせてから、犯した。
ゴミ雑巾のようにその場に捨て、残りの男達はアルコール度数の高い酒をぶっかけた後に股間にライターで火を付けて燃やした。
俺は顔を隠していたし、彼等も自分達が悪いことをしたと自覚があったのだろう…
路地裏で小さなボヤがあった程度のニュースで、
深く取り上げられることはなかった。
7ヶ月後…
妹、全く似てない男の子を一人産んだ。
眉毛が太く体毛が多い赤子だったが、俺にとっては妹の子だから、大切にしようと思った。
でも、妹はその赤子を見る度に犯された男を思い出すのだろう……。
俺が仕事から帰ると、家の自宅で息子と共に無理心中を行って、冷たくなっていた。
首を切られた赤子と腹を刺した妹を見て、
俺のこれまでの努力や希望が全て壊されていった。
繋ぎ止めていた心がガラスのように砕けちった…………。
何故、俺は男として生まれたのだろうか…。
何故、男は弱い女に無理矢理手を出すのだろうか…。
少し力を入れただけで折れてしまう女を…
何故、酷く扱うのか理解出来ないし、
そいつ等と同じ性別であることも、自分自身も嫌った。
八つ当たりの如く、妹を犯した男に…
俺は本気で殺意を向けた。
" ………殺してやる "
" まっ、て…くれ…。俺じゃない… "
" 寝言は寝て言えよ… "
" 本当なんだ…。
あの日、俺は人が来ないように見てるだけの立場だった…。最初に犯したのは…… "
あの日犯した若いホストは、
俺の容姿が妹と面影が似ていたことで、気付いたのだろう…。
本当の首謀者と人物の名前と特徴を吐いた。
それを聞いて…
殺すことは一旦保留にしてから、そのホスト…
いや、下っ端のヤクザを見掛けた。
" テメェ…見覚えがあるな、どっかで?あー…あの時の娘によく似てるなぁ!兄妹か?ははっ、綺麗な顔だから… "
" どうも、覚えていてくれて嬉しいよ。そして…今すぐに死んでくれ "
その男は…あの赤子のように毛深く、眉が太く、重みのある一重だった。
そして何より気に入らないのが50代ぐらいのおっさんで、豚のように超えた野郎だったということ。
市販で買った包丁を片手に殺そうとすれば、俺が男に会いに来ることを知ったホストの男は、それを止めた。
" 兄ちゃん…!やめろって…妹さんは、望んでないと思う… "
" 黙れ…!俺にはもう…家族はいねぇんだよ!今更刑務所に入ろうが知ったこっちゃねぇ!!! "
" 俺も家族が…殺されたから分かる!!仕事が無くてホストをしてるだけで…本当は表で働きてぇよ!!兄ちゃんは、まだ働けるなら…そんなクソ野郎の為に、刑務所なんて入んなよ!! "
あの日、妹が泣き叫んでたのを見てみぬふりをした男が…。
何を馬鹿なことを言ってるのかと、
頭が一瞬真っ白になった。
だが、彼はヤクザの男に馬乗りになって、首へと包丁を突き立てていた俺に、長い事説得をしたんだ。
嫌だったけど立場上逃げられなかった…。
自分にも離れた場所で暮らす妹がいる…。
この男は警察に突き出せばいい…と…。
俺の殺意が揺らいだ時には、彼は持っていた包丁をそっと奪ってから、背中へと抱き着いてきた。
" 辛いのは分かるけど………手を汚すのは、良くないよ…… "
呆れて物が言えなくなり、俺はヤクザを殺すことは無くなった。
そして、警察に突き出せば被害にあった女性は数人居たと言う証拠が出て、そいつは刑務所にぶち込まれた。
そして、何故か知らんが…
俺はこの男……。
秋乃 陽太に付き纏われて
同棲をしていた。
工場勤務を辞めて一日中笛を鳴らしながら棒を振ってるような警備員として勤め、年収590万を稼ぎ、
陽太はホストをなんとか辞めてから、服屋の店員として年収450万を稼いで、二人の給料をシェアして使っていた為に、そこそこいい生活をしていたんだ。
男がクソ嫌いなはずなのに…。
男と生活してるなんて、笑えるな……。
最初のコメントを投稿しよう!