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時間ぴったし…とはいかなかったが、
いつもより30分遅くなり、家へと辿り着いた。
「 腹減った… 」
昨日と同じく玄関でブーツを脱ぎ、空腹を感じながら風呂に行く前にリビングへと立ち寄る。
なんせ、廊下まで香るいい匂いに風呂なんて入ってる余裕はない。
「 おかえり。晩御飯出来てるよ。温め直す? 」
「 いや、いい。腹減った 」
もう一分一秒でも早く食いたいから、温め直す時間など待てるはずがない。
キッチンで手を洗い、ガラスコップを持って浄水器のついた蛇口を捻り、そのまま注いでから一気に半分ほど飲み干し、追加してからそのコップを持ちローテーブルへと置く。
被せていたアルミとサランラップを外した陽太の手元を眺めていると、待てをされてる犬の気分だと思った。
「 どうぞ 」
「 オムライスとハンバーグ…どっちも俺の好きなやつだな 」
大きめの皿に乗った玉子が分厚いオムライスとデミグラスソースのかかったハンバーグ。
陽太の得意料理だなと思い、両手を合わす。
「 いただきます 」
「 うん、日頃頑張ってるから作りたくなって。あ、チキンのケチャップライスだけは余ってるから、食べてね 」
「 おん、多分食う……。あぁ、うめぇ…… 」
ケチャップを追加でぶっかけた玉子とオムライスをスプーンで掬って食えば、甘いふわっとろの玉子と丁度いいケチャップライスが合う。
何度か頷き、次にスプーンでハンバーグを一口に切ってから、口に含む。
「 陽太ってハンバーグ美味いよな…。プロか 」
「 そんなこと無いけど…ありがとう 」
「 ん…… 」
食事の際は、喋るより先に食うことを優先するから、直ぐに無言になるが苦痛ではない。
適当についてるTVに視線を向けていれば、陽太は独り言のように呟く。
「 今日さ…お客さんに、貴方の笑みは胡散臭いって言われたんだけど。接客だから仕方ないよね…そんなニコニコ出来るかって話… 」
「 ふん…? 」
「 そりゃオフの時はちゃんと笑……なに? 」
何度かオムライスを一口サイズに丸めるようにスプーンで救っていた陽太は、顔を上げるなりじっと見つめていた俺に気付き、ハッとしてから口元に手を置く。
「 まさか…ついてる!? 」
「 付いてる……ここ 」
相変わらず焦ってる事に、特に気にせず手を伸ばし顎を掴み、親指で左口端を拭けば、そのままごく普通にその指を舐めていた。
「 あ、え……ありがとう 」
もう一度口元をウエットティッシュで拭き直す陽太がおいたゴミに、親指を擦り付け軽く拭いては、料理を食べ進める。
「 接客に無理して笑う必要ねぇだろ…そんな事してたら、身体いくつあってももたねぇよ 」
「 でも、ほら…俺は接客業だからね。笑う必要あるから… 」
片手の指先を頬に当て、頬筋を柔らかくしてるような陽太に視線を戻す。
「 笑って 」
「 ふふっ 」
ニコッと笑顔を向けて来たことに無意識に呟く。
「 …可愛い 」
「 え? 」
「 ……このアイドル。( 俺は何いってんだ…きもっ… )」
「 いや、ちょ…今の間はなに!?糠喜びしかけたんだけど! 」
男相手に可愛いとか、マジで何考えてんのか意味分からんが、俺に向ける笑顔だけは営業スマイルなんかじゃねぇのでは…と思えたから、そう呟いてしまったんだろう。
夕食を終え、キッチンに空の弁当箱を出してから風呂へと向かい、制服を脱いでから洗っていく。
やっとスッキリする感覚は、いつも気分がいい。
「 あぁ、洗い物ありがとうな 」
「 ん?いいよ…さて、俺も風呂入ろっと 」
先に入って無かったのかと思うが、まぁタイミングなんて人其々だろうから気にすることは無い。
今日は勉強をする気にはなれず、プロテインを作ってから寝室に持っていく。
「 きれいになってやがる……。礼でも言っとこう 」
サイドテーブルにプロテインを置き、スマホを片手に自分の王国を築き上げるゲームをし、寝るまで暇を潰す。
途中で別のサバイバルゲームをしていれば、フッと僅かに聞こえる声に気づいた。
「 ン…ん、ン……ァ、あ…ッ… 」
「( AVでも観てんかな…。まぁ、陽太も溜まるもんは溜まるだろ… )てか、制服の中に小銭入れてるの忘れてた 」
日頃ジュース代を奢れるぐらいは胸ポケットに入れてるが、10円玉程度しか残ってないことを思い出し、それを取りに行く。
「 あ?上着がねぇ…てか、洗濯するの忘れていた…… 」
いつも陽太が何気なくやってくれるから放置してたが、してない時も希にある。
流石に、明日臭いまま行きたくはねぇから上着を探す。
もちろん、陽太が持ってることは推測はつく。
彼奴は偶に、ほつれていたら縫ってくれるし、アイロン掛けも終わらせてたりする。
だから上着がねぇ時は決まって陽太の部屋だ。
「 陽太、俺の上着… 」
「 へぇ、あっ……! 」
ノックをしなかった俺も悪いが、陽太も普段しないからお互い様だろうが……。
目の前の光景に、陽太も昨日同じ気持ちだったのかと思う。
「 あ、ッ…これ…そ、の… 」
だが、一つ違うのはそのオカズに使ってるものだ。
陽太は俺の制服の上着を片腕に抱き締めて、ケツ穴にディルドをぶち込んで、自慰をしていた。
そして…鼻に付くオメガ特有の甘ったるいフェロモンの匂いに、眉間へとシワが寄る。
「 何、御前……オメガだったわけか? 」
「 っ……… 」
上半身を起き上がらせた事で、自然とディルドはケツ穴から抜けていたが、陽太は俯いて言葉を閉じた。
「 チッ……… 」
何故、この一年…気付かなかったのだろうか…。
オメガなら匂いで直ぐに分かるだろう…。
いや、発情期を長期間止めてるオメガは、匂いが薄くなるのを聞いたことがある。
だが…気づかなかったはずの匂いがこれだけ強く香るなら、答えは一つしかない。
「 発情……起こしてるのか… 」
陽太は何も言わず、俯いてジッとしては顔を上げ、涙を溜めた表情で告げた。
「 アルファなら、さっさと…気付いてよ…馬鹿!見たくないなら…見なくていいから、さっさと扉を閉めて出て行って……久々の、発情で、身体がおかしいから… 」
言わなかった本人が、何を言ってるのかと思うが一理ある。
俺は鈍感すぎた、それは謝るが……。
下半身だけ衣類を身に着けてない様子は、なんとなく目を奪うものがあり、腕を組んで入り口に凭れる。
「 なら、見ててやるから。その短小ディルドで俺を思ってやれよ。匂いを嗅いでやってるってことは、オカズにしてんだろ?いいぜ、ヤれよ 」
「 っ……… 」
奥歯を噛み締めて、もう一度俯いた陽太は少し震える手で、ピンク色のディルドを掴み、態とらしく俺の方に股を開き、濡れた穴へと押し当ててはゆっくりと埋めた。
続けるのか、と思ったが…。
少し面白いから見てることにしてやる。
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