追う鳥3

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追う鳥3

「じゃあ、なるべく急いでまとめるから。少しだけ待っててくれ」  オフィスに着くとオゼさんは一人、半透明のブースへ入って行った。 「俺たちの方はもう準備できているから。何か手伝えることがあったら声をかけてくれ」  たぶん、アオチさんのこういう所が余計なんだ。  オゼさんが助けを必要としたことなんて一度もないじゃないか。あなたは歳も近くて割と仲も良いのだからわかるでしょ、と言いたくなる。僕がオゼさんを不気味に思っていたのはいつも一人だから、というだけではない。それを言うなら僕だって大して変わらない。  オゼさんは見た目から不気味だ。少なくとも僕はそんなことはない――と信じたい。背がひょろりと高くて、あのうっとうしい前髪のせいで、どこを見ているのか、なんなら本当に見えているのかも怪しい。実際はどんな顔をしているんだろう。そう思って、オゼさんの消えたドアを眺めていると、アオチさんに声をかけられた。 「あんなのに憧れるのか?」 「どうして見ていただけでそうなるんですか。先輩としては尊敬しています。タイプが似ているからかな。五年後にはオゼさんみたくなっていたい。五年後があれば、ですが。コーヒー飲みますか」  共有スペースのソファに腰かけるアオチさんに尋ねる。 「なんだよ『五年後があれば』って。不吉な言い方するな。俺、紅茶がいい。砂糖とミルク入りで。それにしても傷つくな。俺はずっとお前の理想の先輩になろうと頑張ってきたのに、あんな不愛想なやつに負けるなんてな」 「すみません。それで、紅茶ですね」  いつもはコーヒーなのに。みんなの前では恰好をつけてるんだろうか。  共有スペースの目の前にある給湯室でティーバッグの紅茶を二つ入れて、ソファの前のテーブルに置いた。最初にお湯を注いだ濃い方がアオチさんのだ。 「オゼが出て来るまで、ちょっと二日前からのことを整理しないか? まずお前の話を聞かせてくれよ」
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