昇日へようこそ

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昇日へようこそ

2043/9/2 緊張してきたなと、安直な感想を抱く 多分自分だけではない、ここにいる人たち全員が同じ気持ち 宇宙船が到着した後船着き場の近くに建っていた会場に案内され、今絶賛待機中だ 此処にいるのは地球において優秀な実力を残した大企業から、多くのチェーン店を獲得したポピュラーな店舗、歴史的な技術を持った活動家など 自分は有名な雑誌を取り扱う、いわゆる大企業なのだが 正直此処に来れた人達と比べると、たまたま席が空いてたから来れたような 写真撮るのが人より上手だったからとか、そうゆう理由で来た平社員 …正直肩身が狭い ただの一般社員過ぎて周りで行われている名刺の大交換会に参加しにくい 「ようこそ地上の皆さま。」 コツコツと足音が聞こえる 台の横から青い髪のうさ耳を付けた女性が現れる 何故うさ耳と当然の困惑を気にする事もなく話続ける 「初めまして、そしてお久しぶり。改めましてようこそ、月面都市昇日へ。皆さまの来場、心よりお待ちしておりました。失礼、自己紹介がまだでしたね。私はドルシネア、王より皆さまの案内役を仰せつかっていります。いごよろしくお願いいたします。」 丁寧なお辞儀をするドルシネアさん 少しずつ拍手が鳴り響き、包まれた 頭を上げ、指を鳴らすとドルシネアさんの後ろにモニターが表示された 「早速ですがミーティングを始めます、まず何故皆さまが昇日に招待する運びとなったかを再確認しましょう。WW2の後99年もの間地上との関係を断ってきた昇日ですが、宇宙進出を可能とした今、昇日への移住を考える者も現れるでしょう。そこで皆さまには、移住者、住人ともに満足できる事業を行って欲しいのです。ではモニターをご覧ください。」 モニターに昇日の全体図が映し出される 円形の形に9つの区間が分けられている 「期間は1年。半年をかけて全ての区間を紹介し、残りな半年で事業開始の準備を進めてもらいます。昇日には9つの区間と9人の(セフィラ)と呼ぶ管理者がいます。各区間の説明は現地で、一人一人が個性的な面々ですが皆さまの力になってくれるでしょう。以上で確認は終わります、質問がある方はご自由にお聞きください。」 モニターが消え質問タイムとなる 我こそはとこぞって質問を投げかける人に対ししっかりと誠意を持って答えるドルシネアさん 一般社員である自分はそんな光景を飲みなれた緑茶を飲みながら見届けていた 第7地区 オモイカネホテル 「では1週間後の取材の為に、皆それぞれ英気を養ってくれ。それでは解散!」 解散の一言によって社員全員が散り散りになっていく 全体ミーティングの後ドルシネアさんの手引きでホテルに到着した 荷物をまとめた後すぐに会議を行いどういった内容にするか話し合って今に至る 正直疲れたから部屋でゆっくり休もう... 「間宮先輩~。お疲れ様です~。」 ...どうやらまだ休めないらしい 「お疲れ様、癒美さん。」 「も~間宮先輩ったら、恵って呼んで下さいって何度も言ってるじゃないですか~。」 「はは...、そうもいかないよ。」 彼女は癒美恵(いやみめぐ)、後輩だ 彼女は何故か自分を目の敵にしている様で、よく嫌味を言ってくる 「先輩は取材までどう過ごすんですか~?」 「とりあえずホテル周辺を探索しようと思ってるよ。」 「まぁ、先輩らしい地味な過ごし方~。私はですね~、他の先輩方と第8地区の海で観光することにしたんですよ~。羨ましいでしょ~。」 「うん、癒美さんらしいね。」 聞いてもいないのに答えてくる、あんまり意味ないのに自慢して自分を下に見たいらしい 「それじゃ明日早いので、お先に失礼します~。」 「うん、お休み。」 「おやすみなさい~。」 言うだけ言って戻ってしまった 彼女がしたい事はいまいちわからないなと考えつつ、自分も部屋に戻った 2044/9/3 第7地区 オモイカネホテル周辺 「涼しいなここは。」 お気に入りのカメラを持ってホテルの近くをあてもなく歩く 昇日でも夏が過ぎでも残暑が続くのかと思ったが、そうでもなく 陽はあるが風が涼しい 周りにビルらしき建物が少なく風通りも良い この辺りは住民向けの商店街の様で美味しそうな匂いが漂っている ホテルで食べてなければ食べ歩きしてしまいそうだ 「それにしても、月の上で青空が見れるなんて。凄い技術だな~。ん、なんだろう此処?」 楽園の超技術に関心していたら、商店街の中に異様な雰囲気を漂わせている建物が 「ええっと、アカシア事務所?」 アカシア事務所と書かれた看板がかかっている謎の建物 見た目は廃墟...とは行かないが年季が入っている おや?入口前に看板が 「ペット捜索、探偵、護衛まで、何でもします?」 捜索、探偵、護衛?、要は何でも屋かな 何でもありそうな昇日でもチープな職種があるもんだな ...入ってみようか? 正直気になる 電気がついていないから定休日の可能性も... 「あ、開いてる。」 開いてたよ 開けたからにはもう入るしかない 「こ...こんにちは...うわっ!?」 「打ち取ったりーーー!!!」 突然背中にズドンッと衝撃が走る 何か、重たいものが落ちてきたような 「な、何!?何なの!?」 「何とな!よくとぼけたものだ盗人め!この陽三(ひなみ)様が成敗してくれようっ!!」 「盗人!?違うよ!後、勝手に入ったのは悪かったです!誰か助けてーーーっ!!!」 「ふぁ~あ。何かあったのか?陽三。」 陽三という女の子に襲われ?ている所に、店の奥から髪がぼさぼさの男性が出てくる おそらく従業員だと思われる男性は、ぼんやりとした顔で状況を理解し、後ろに回り女の子を引っぺがした 「離せ狗神(いぬがみ)!わらわは盗人に天罰を与えようとしただけじゃ!」 「ごめんな~、うちのお転婆が。こらお前も謝れ。」 「嫌じゃ。わらわは悪くない!」 「い...いえ、お気になさらず。」 背中を擦りながら立ち上がり2人を見る さっきは気づかなかったが、男性には狸の耳が、女の子には狐の耳と尻尾が付いていた 「えっと...よくできた飾り耳ですね。とてもお似合いです。」 「ん?ああこれ?これね、本物。」 「えっ。」 「触ってみる?」 「い、いえ、結構です。」 本物の獣耳...だと... 流石昇日、動物の部位を付ける技術を開発していたとはと感心していたら 事務所奥の机から警告音がけたたましく鳴り響く 「うおぉ!?何だっ?」 「慌てるな我が下僕よ、ただの緊急依頼じゃ。」 「下僕って自分の事!?」 「……ふむ。出るぞ陽三、ヴォイドが出た。」 「ヴォイドじゃと!?フフフ、腕がなるの~。行くぞ下僕!わらわの為になんこつがいじんするがよいっ!」 「だから下僕じゃないって!あとヴォイドって何!?それと粉骨砕身だから!」 狗神さんが緊急依頼とやらを確認したら図ぐに準備し始める ヴォイドとは文字通りの緊急事態らしい 正直自分が行っていい事態ではないと思うが陽三ちゃんが納得しない雰囲気を出している 邪魔にならない程度に隠れよう、そう誓った 第7地区 住宅街 「アカシア事務所が来たぞ!」 ヴォイド発生地と思われる住宅街に到着する 其処には警察と思われる警棒や拳銃を持った人たちと、人型の黒い靄が争っていた 「あれが、ヴォイド?」 「そうさ。突然現れては人様に迷惑を掛ける、可哀そうな奴らさ。」 「そしてそんな哀れな者どもに天誅を下すのが我らアカシア事務所なのじゃ! 我が下僕よ、わらわの活躍を目に焼き付けるが良いっ!!」 「上がりすぎて大怪我すんなよ。兄ちゃんは隠れてな!」 狗神さんに言われ急いで隠れる 警察と対峙していたヴォイドが陽三ちゃんと狗神さんをを認識し、標的を2人に変えて襲い掛かる 迫りくるヴォイドを気にすることもなく、懐から十手を取り出し、切り裂くために伸ばされた腕を叩き落す そのまま逆手でアッパーを放ち、十手で頭部を破壊し、対峙したヴォイドは霧散した 霧散と同時に強襲せんと襲い掛かったヴォイドは陽三ちゃんのドロップキックをもろに喰らい霧散した 突然現れた強者に恐れたヴォイドと対象的に警察の士気が上がり、見事な連携によって悉く倒されていった 「よっしゃ、一丁上がり!」 「ふ、またわらわの伝説が更新されてしまった。」 ...すごい物を見た、と思った おそらく拮抗していた戦闘を一気に優勢に変えてしまった 失礼だがオリンピックを近くで見ているような高揚感があった 写真を撮ればよかったな... 「アカシア事務所の皆さま、討伐のご協力感謝します。」 「おう、そっちもお疲れさん。」 「この調子で明日の護衛もよろしくお願いします。」 「もちろん、報酬も忘れずにな。」 「わかっていますよ。では後処理に戻ります。」 軽く会話をした後、礼儀正しく敬礼をし去っていく警察 報酬金の話を出していたからある程度は親密な中らしい 「見ていたか我が下僕よ!どうであったか、わらわの活躍は。」 「…凄かったよ!凄かったけど、怪我はない?」 「案ずるな、この程度など日常茶飯事じゃ。準備運動にもならない。」 「そーそ、最近はこのくらいの戦闘もしょっちゅうやるよ。」 誇らしそうに鼻を高くする陽三ちゃんに対してめんどくさいと言わんばかりに頭を掻く狗神さん 最近というからには前々からヴォイドは出ていたらしい あんな不可思議で危ない生き物?がいるなんて、昇日は思っているような楽園ではないみたいだ 「そんじゃ仕事も終わったし何か買って帰るか。いくぞ陽三。」 「うむ凱旋じゃ。声高らかに凱歌を歌うのじゃ!行くぞ我が下僕よ!」 「えっ、自分も!?」 当然の様に自分をメンバーに入れている陽三ちゃん 子供の無邪気さは怖いな ...まぁいいや、自分も何か買ってこよう 2044/9/4 第7地区 タイヨウ植物園広場    ...昨日は散々だった 大量の酒と料理を買って昼間からどんちゃん騒ぎ と思ったら依頼が入り何故か自分も働かされ 帰ってきたらまた酒酒酒 自分の職業を伝えたら、自分たちを取材すべきだとなって何故かアルバイトとして働く事となってしまった...何で? 自分たちは本物の妖怪だとか、昇日の誕生経緯とか、セフィラの話とか、各地区の特色とか、面白い話は沢山聞けたが、...もうどうしてこうなった 「時間厳守とあれほど申したじゃないですか!」 「ごめんごめん〜、...ひっくっ。」 「うわっ、酒くさ...、本当に頼みますよ!」 酒盛りのせいで案の定遅れて警察基、検司隊(けんしたい)の偉い人に怒られている いや、怒られているだけましだ 大量の検司隊、他に依頼を受けただろう事務所、何しろこれから行う仕事は、とても大切なのだから 「もう直ぐ女王陛下がいらっしゃいます。女王陛下も護衛の方も腕利きの方ですが、何かあっては昇日の一大事です。その為に事務所(あなたがた)にも依頼を出したのです。規律を持って正しく行動して下さいっ!!」 「わかってるよ〜。まかしときな夜鷹(よだか)。」 「全く、これだから呑んだくれは。」 ぶつぶつと言いながら離れていく夜鷹さん 新しくできた植物園の開催セレモニーに訪れる女王の護衛 そんな大事な仕事の最高責任者である夜鷹さん ...うん、申し訳ないな 「取り敢えず位置に着くか。...おや、来たみたいだ。」 狗神さんが指を指す 指された方向に傾けると、そこには純白のドレスを纏う白百合の様に美しい女性が歩いていた 女王陛下、虹の王座とも呼ばれている昇日の心臓 名は、マルクト 顔を纏う布の性で顔が見えないが凛とした佇まいに圧倒される 「おい、見とれすぎじゃ。持ち場にいくぞ。」 「えっ、でもあの人一人だよ?」 「後ろの護衛が見えんのか。問題ない、ゆくぞ。」 あ、ほんとだ 灰色の青年と黒の少女がいる 気づかなかった 確か二人ともC(セフィラ)の一人だったはずだ 「敵襲!敵襲ーーー!!!」 強襲、その一言に緊張が走る 検司隊、事務所、護衛のC(セフィラ)が女王を守れる配置に着く 敵は、ヴォイドはやって来た 「敵の数小型30体、大型10体!絶対に陛下に近づけさせるな!」 「下僕よ、わらわの近くを離れるな!そしてわらわの活躍をしかと刮目せよ!」 「わ...わかった!」 忠告道理に陽三ちゃんの近くで身構える 女王を打ち取らんと進軍するヴォイドを迎え撃つ夜鷹さん率いる検司隊 狗神さんが電光石火の如く大型を斬り割き、他の事務所も続いて討伐にかかる 剣術、銃、魔術、各事務所の特色を用いて殲滅されていくヴォイド 余りにも優勢だ!このまま行けば問題なく終わるだろう 「大型追加!マルクトを守れ!」 灰色のC(セフィラ)が叫ぶ ...まるで漫画や映画の様な展開だ こちらの都合よくは終わってくれないらしい 女王の退路を塞ぐ様に表れたヴォイドはそのまま勢いよく襲い掛かる 身の丈程ある大剣を持った灰色の男が即座に対応し 黒の少女が女王を下がらせ弓を用いて補助する 女王の周りには敵がいない しかし護衛もいない 「あっ。」 少し遠くの高台から黒い影が 女王を目掛けて飛び掛かる 女王は気づけたが遅かった このままでは傷ついてしまう 「マルクトっ!!!」 黒の少女の悲痛な叫びが響く 検司隊も、事務所も、狗神さんも、陽三ちゃんも、誰も、間に合わない ヴォイドのかぎ爪が、女王の首元に 「まみやフラッシュっ!!!」 カメラのシャッターを切る 突然の光がヴォイドの目をくらませ、首元に迫ったカギ爪が寸前で止まる 間に合った 高台のヴォイドが見えた瞬間走り出し無我夢中でカメラを構えながらヴォイドの、前に立ちふさがった そしてカメラを切り、女王が傷つく前に、間に合った 「陽三ちゃんっ!!」 「任せたっ!!」 疾風迅雷の如く、ヴォイドは陽三ちゃんによって切り刻まれた 流石、自称伝説を作る天狐 「すまない。大丈夫か?」 「わっ!自分は大丈夫です。貴方の方こそ大丈夫...」 ヴォイドに立ちふさがった時に顔に触れてしまったのか顔の布が外れて表情が見れる 透き通るように白い肌に大きく開かれた虹の様に美しい瞳 なんて、純粋に、安直に、正直に、 「きれいだ。」 白く美しい顔は驚きに満ち、桜色に染まる 綺麗だ そして可愛い こんな可愛い人が女王として慕われている事に驚く いや、当然か これほど可愛くて美しい人なら誰でも守りたくなる 「はいはい離れようね。」 首根っこを掴まれ無理やり離される 黒の少女だ 近くに陽三ちゃんもいる 「マルクトを助けてくれてありがとう。でも余り見すぎるのは紳士として恥ずかしいことですよ。」 「そうじゃぞ。恥ずかしいぞ下僕よ。」 「え、自分そんなに見てた?」 「い...いや、大丈夫。気にしてない。行こうビナー。」 黒の少女、ビナーに連れられ移動する いつの間にヴォイドは全て片付けられ、荒れた植物園を直していた 「ほら、お前も片付けを手伝え。」 「うん。あっでも写真もとらせてね。」 急かされたので急いで陽三ちゃんの後を追う ...それしても本当にきれいだった 綺麗な物美しい物をみたら写真を撮ろうと思っていたが本当に美しい物を見たら何もできない物だなと、感心しながら、片付けと写真撮りに専念した アカシア事務所  「「かんぱ~いっ!!!」」 「乾杯。」 「乾杯。...何故俺まで。」 あの後開催セレモニーは無事に終わり ヴォイドの襲撃も無く怪我人もでなかった 今自分たちはアカシア事務所で打ち上げをしている ...夜鷹さんも誘って 「さー飲め飲め!兄ちゃんの夜鷹も飲め!」 「飲ん兵衛め、まったく気が緩みすぎだ。」 「まあまあ、何事もなく終わりましたし。あ、ほら唐揚げどうぞ。」 むすっとながらも夜鷹さん唐揚げを頬張る この人は飲むより食べる方が好きらしい 「それにしても兄ちゃん、女王をガン見したんだってな。」 「が、ガン見だなんて。」 「照れるなよ。なあ、どんな顔だった?美人だったか?」 「美人じゃったぞ。」 「お前には聞いてねーよ。」 どんな、顔だったか、か... 「……とても綺麗な人だった。」 ヒューと口笛が鳴るが気に留めずに 女王を、マルクトを思い出す 何度思い出しても美しい人だ またあの桜色の顔を虹の瞳をまじかで見てみたいなんて 不敬なことを考えてしまう もうあんな奇跡は起こらないのに... 「ん?」 「どうした陽三?」 「今誰かドアを叩かなかったか?」 全員の目線が扉に注目する 控えめに叩かれたノックの後に続いて扉が開かれた 「…こんばんわ。」 ……うそ そんな なんで ここに 「お...おぬしはっ!?」 「…間宮さんは、いらっしゃいますか?」 其処にはとてもラフな格好をした、女王陛下マルクトが、立っていた
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