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その時、玄関のドアが軽くノックされた。ナオミは背筋が凍るような感覚を覚えた。この時間に訪ねてくる人などいないはずだ。 しかも、さっきまで足音を聞いていた不審な何かを考えると、そのノックが誰なのかを知るのが恐ろしくてたまらなかった。 ノックの音がもう一度鳴り響いた。それはかすかでありながら、不気味な響きを持っていた。ナオミは意を決してドアスコープを覗き込んだが、そこには何も映っていなかった。 不安が限界に達し、彼女はドアを少しだけ開けてみることにした。チェーンロックをかけたまま、ほんのわずかにドアを開けると、冷たい空気が一気に部屋に流れ込んできた。 だが、そこには誰もいなかった。安心したのも束の間、ナオミはドアを閉めようとした瞬間、チェーンが外れる音を聞いた。 彼女は目の前でチェーンが勝手に外れるのを見てしまったのだ。 ナオミは恐怖に駆られ、ドアを全力で閉めようとしたが、何かがドアを押さえつけているかのように、ビクともしない。 「誰か…!助けて…!」 彼女は叫び声を上げたが、その声は虚しく響くだけだった。ドアの隙間から冷たい風が吹き込み、何かがその隙間から侵入してくる感覚がした。 その瞬間、ドアが勢いよく開き、ナオミはバランスを崩して倒れ込んだ。目の前には、黒い影が立っていた。 その姿は明確ではなく、ただ不気味な存在感だけが彼女を襲った。 「…誰…?」 ナオミの声は震え、まともに発音できなかった。その影は答えず、ゆっくりと彼女に近づいてきた。 最後にナオミが見たのは、その影が彼女を覆い尽くす瞬間だった。
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