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その時、後ろから微かな足音が聞こえた。ナオミは瞬間的に立ち止まり、周囲を見渡した。しかし、そこには誰もいない。 風が木々を揺らす音が耳に届くだけだ。ナオミは首を振って、自分が疲れているだけだと納得させた。しかし、再び歩き始めると、足音もまたついてきた。 彼女の心臓が鼓動を早める。振り返る勇気はなかったが、何かが後ろにいるという確信は強まっていった。 ナオミは歩くスピードを上げ、息を切らしながらアパートに向かって走り出した。ドアを開けて中に入ると、すぐに鍵をかけ、息を整えた。 部屋は静かで、いつも通りの様子だった。しかし、彼女の不安は消えない。どうしても何かがおかしいと感じてしまう。 リビングのソファに腰を下ろし、ナオミは深呼吸を繰り返した。ふと、背後にある窓が視界に入る。 外は真っ暗で、窓ガラスには彼女の反射だけが映っていた。だが、その反射の中に、もう一つの影が見えた。ナオミは恐怖で身動きが取れなくなった。 その影は、彼女の背後に立っている何者かのものだった。 息を潜めて影を凝視すると、それが少しずつ動き出したのがわかった。 影は、ナオミに向かって手を伸ばしてきた。彼女は悲鳴を上げ、反射的に振り向いた。 しかし、そこには誰もいなかった。窓の外を見ても、ただの闇が広がっているだけだ。ナオミは混乱し、現実と幻想の境が曖昧になっていくのを感じた。 「気のせいだ…疲れてるだけ…」 彼女は自分にそう言い聞かせ、無理やり平常心を保とうとした。
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